<< 第5回 日本と外国、ちょっと?なビジネスマナー座談会 | main | 日本大好き!ポーランド人(ポーランド) >>
第6回 我が子のバイリンガル教育について
0
    ◆座談会参加メンバー◆


    ◆みゆきりん(香港・ランタオ島在住)
    香港生まれの5歳児と3歳児はインター幼稚園に通う。「子どもの日本語教育のために!」と日本語教師を目指すが、1年ほどで向いていないと判断。子どもたちは週1回、日本語教室に通う。いずれは夫の故郷のニュージーランドに移住する予定。自身が小学4年生から中学3年生、プラス大学1年をアメリカで過ごした帰国子女。

    ◆伊藤 葉子(Yoko Ito-Peterson)(アメリカ合衆国・ロサンゼルス在住)
    米国生まれの長男は現地校で1年生、日本語の補習校では2年生。やはり米国生まれ4歳の次男は現地のプリスクールと日本語の幼稚園に通う。米国永住予定だが、将来的に数年日本に住みたいと希望している。

    ◆うえのともこ(ネパール・カトマンズ在住)
    日本生まれの長男は現地校2年生、この春から日本語補習校に入学。在住年数が半々となり、脳みそがだんだんネパール語に侵食されてきている模様。しかしネパール語に翻訳される本は少ないので、将来何を学ぶにしろ、ネパール語以外のメジャー言語が必須。ネパール生まれの次男(10ヶ月)はどうなるか?「ばぶばぶ」

    進行役
    ◆椰子ノ木やほい(アメリカ合衆国・ミシガン州在住)
    1997年、長女の中学入学を機に、受験のない世界での、のんびりゆったり子育てとシンプルライフ、スローライフを求めて南太平洋の小国サモアに家族で移住。当時長女12歳、長男9歳、次男8歳、三男5歳。4年間のサモア滞在中は、通信教育とホームスクーリングで日本語の勉強。2001年よりアメリカ・ミシガン州在住だが、日本語補習校には4人とも無縁。現在、長女は大学院生、長男、次男は大学生、末っ子はハイスクールに通っている。

    ========================================

    さて今回は、海外で暮らしている私たちが、バイリンガル教育について、おしゃべりしてみました。日本人の母として、我が子に日本語もできるようになってほしいと願うのは当然のことですが、それなりに苦労もあると思います。さて、どんな苦労やアイデアが飛び出すのでしょう。

    【やほい】
    皆さん、今回は地球丸座談会に参加して下さりありがとうございます。前から聞いてみたかった題材なんですよ。

    我が家は家族全員が日本人ですので、家庭内は日本語です。同じ家庭環境で育ってきた娘や息子たちのはずですが、日本語環境にいた時期、英語環境に放り込まれた時期が違うので、彼らのバイリンガル度の比重は微妙、いやかなり違います。日本語で暮らす我が家でもそうなのですから、これが国際結婚カップルとなると、もっと複雑なのだと思いますが、皆さんのご家庭では、おもに何語で会話しているのでしょう?そして、お子さんたちの母語は何語といえますか?


    【みゆきりん】
    夫はニュージーランド人なので、ダディーとの会話は英語です。私とは日本語で話をしますが、これは日本語で話しかけないと答えないというのがあるからかもしれません。ラッキーなことに私の両親が近くに住んでいるので、おじいちゃん、おばあちゃんとは日本語で会話しています。

    子どもたちの母語は英語です。通っている幼稚園はインターなので英語ですし、近い将来はニュージーランドに移住する予定なので、英語を基本にした方が子どもたちにとってはいいのではないかと思います。


    【ともこ】
    家庭では日本語ですが、だんだん家族独自の言語(ネパール語動詞を日本語的に活用させたり、穴埋め的にどちらかの単語を混ぜて使ったり)でコミュニケーションがはじまり、よくないなぁと思っています。

    長男の現地校では教科書を使用せず、ネパール語を軸に学んでいますが、3年生までしかなく、一般の学校は教科書も授業も英語で進められますので、今後英語も大切になってきます。若い世代は、ネパール人同士でも英単語交じりの会話になっていて、それもまずかろうと思っています。


    【葉子】
    みゆきりんさんと同じで、子どもはパパと英語で私とは日本語です。家庭で彼らが日本語で話せるのは私だけなので、厳しくチェックします。たとえば「ミルク」と言ったら、「牛乳」と言い直させます。意地悪な母親でしょうか?

    私たちの日本語での会話を夫は理解できないのですが、それを不快とは思っていないようです。夫には日本語を勉強してもらうつもりです。そうしないと、私たちの苦労は分かりませんよね。


    【やほい】
    ということは、父親の母語がネパール語、母親は日本語、そして学校教育は英語主体というともこさんのお宅が今後、いちばん複雑そうですね。

    お子さんにはズバリ、何語をどの程度身につけてほしいと考えていますか?そのために、母親としてできること、するといいと思っていることはありますか?


    【みゆきりん】
    英語を母語として、日本語は読み書きができる程度にはなってほしいと思います。長男妊娠中に自費出版で妊婦旅行記を出版したのですが、まだ見ぬ我が子への愛情が伝わるこの本を、自分で読めるくらいの日本語力はついてほしいというのが母の願いですね。
    北京語も習っているのですが、本人たちが楽しく教室に通っている間は続けさせたいです。

    私は毎日子どもたちが寝る前に日本語の本を必ず2冊読みます。


    【ともこ】
    毎日、2冊も!私は最近怠けているので、感心します。本が少ないから、という言い訳で……。


    【やほい】
    確かに根気のいることですよね。本を読んであげるって、小さなことのようですが、言葉の教育だけでなく、スキンシップにもなり、集中力や知識の向上など、これだけのことから得るものは計り知れないと実感しています。私も子どもが小さいときは、毎晩欠かさず、子どもの数だけ読み聞かせました。移動図書館から毎月必ず25冊の本を借り、それを何年も続けていたので、読み聞かせた本の数は軽く1000冊を超えますが、本のタイトルを記録したノートは今も大切にしまってあり、“私”の宝です。振り返ると、この時間が下の子ほど短かったことが、今の日本語力にも多少影響している気もするのですが、もう取り返しがつきません。


    【葉子】
    読み聞かせた本が1000冊以上ですか! 記録ノートは、子どもさんに引き継がれるべき宝ですね。毎晩読み聞かせを続けている、みゆきりんさんもえらい!


    【みゆきりん】
    あと、お雛様やこどもの日、七夕などは日本人やママが日本人のミックスのお友達をよんでパーティーをします。言語はもちろんですが、日本の文化も知ってほしいからです。


    【ともこ】
    ネパール人の夫は漢字で苦労していますので、子どもたちにも日本語をしっかりと!と思っているし、私も同じ思いですね。今まで全くアカデミックなことをしてこなかったのですが、これからは補習校の宿題を見てあげたいです。でもすぐに喧嘩になって、脱走していくーーー。


    【やほい】
    わかります、わかります。自分の子どもを教えるって忍耐、忍耐、忍耐ですよね!


    【ともこ】
    どれもこれも中途半端になってしまうのが一番よくないので、日本語は補習校で中3までかんばってもらって、その後は、自分で方向性を見出していってもらえれば。


    【葉子】
    漢字は確かに苦労しますよ、特に使う頻度が少ないとね。私は息子たちには英語を軸とし、日本語はある程度の読み書きが出来るようになって欲しいと思います。具体的には補習校の6年生修了が目標です。日本文化に触れるということで、長男は5歳より空手を習っています。先生は米国人ですが、「カタ(型)」「ギ(着)」といった日本語の単語を使います。家では折り紙をやり、なるべく和食を心がけています。


    【やほい】
    みなさんスゴイ! いろんな努力をされているのですね。「日本文化に触れるため」という意識をもって、空手を習わせるというのにも感心します。うちの息子たちはは、サモアで空手を習っていましたが、アメリカに来てからは、韓国空手ともいえるテコンドーに転進してしまったので、武士道精神もどこへやら〜? って感じです。

    話を元に戻して、皆さん、お子さんを日本語に、そして日本文化に触れさせる努力をする中で、何かご苦労はありますか? ご家族の協力という意味ではいかがですか?


    【みゆきりん】
    長男の日本語教室は土曜日にあります。でも土曜日ってお友達の誕生日パーティーが多いんですよね。かわいそうだとは思うのですが、ベストフレンド以外のパーティーは参加していません。自分自身が土曜日の補習校のために参加できなかったイベントが多かったので、気持ちはよくわかります。でもあの時、私の母が「補習校を優先」という態度だったので、私の日本語レベルがある程度は保たれているのだと思います。いずれはわかってくれるだろうと期待しているのですが……

    その母ですが、相変わらず日本語(文化)教育に熱心で、孫たちに書道とそろばんを教えています。


    【ともこ】
    良いことを聞きました! 私も「補習校優先」で参りたいと思います。ここでは娯楽や誘惑がすくないので、補習校は楽しみで喜んでくれているのが幸い。私はお弁当作り、夫は送り迎え担当で支えていければと思います。夫にはもうちょっとネパール語を見てやって欲しいな。息子は、文字を書くのにてこずっていて、1年生では鏡文字(左右反転させた文字)をよく書いてました。


    【葉子】
    うちの長男も土曜日に補習校です。贅沢な話ですが、ここには日本語の補習校が数校あり、ほかに塾もあるので、選択肢が多いのです。えらそうですが、長男は一番難しいといわれる補習校へ入れてしまいました。覚悟していましたが宿題が多く、土曜日の夕方から補習校の宿題を始めるときもあります。あと長男は3歳から、毎年夏に日本の幼稚園、小学校と体験入学をしています。ですからお友だちがいて、夏に日本へ行くと、みんなが「お帰り」と言ってくれるのです。本人は日本が好きみたいです。

    次男も昨年、幼稚園の2歳児クラスに体験入学しました。彼には、ベネッセの『こどもちゃんれんじ』をやらせています。こちらにある日本語の幼稚園では、日本語の歌を習い、雛祭りといった日本の行事に触れています。うちは男の子なので、将来的にしっかりスポーツをやらせたいと思っているので、補習校との両立が課題になってくるでしょう。


    【やほい】
    私自身は、いくら海外生活が長くなってきてもやはり日本語で思考し、たとえ英語を話すときでも日本語で思考したことを英語にしているという、母語は日本語、そして思考回路もバリバリの日本人といえますが、自らが、帰国子女だとおっしゃる、みゆきりんさんは、いつも何語で思考しているのでしょう? 葉子さん、ともこさんはいかがですか?


    【みゆきりん】
    私の頭の中は単純なので、その時使われている言葉で思考しています。日本語で書くときは日本語で考え、英語で話す時は英語で考えます。ほんの少ししか話せない北京語は、それを学習したときに使った言語(英語)で考え、それを北京語にしています。


    【ともこ】
    バイリンガルの頭の中ってそうなってるのですかー! 日本語から北京語にはなりにくいということなのですね。


    【やほい】
    ほんと、言葉っていうのは、たんに言語として、日本語、英語、または××語ができるといった単純なものではないんですよね。結局、母語で思考し、外国語としての別の言葉で表現もできるということになりますが、英語で教育を受けてきた娘や息子たちを見ていると、母語が日本語であっても、状況により、思考回路が日本語だったり、英語だったりしているのを感じます。

    長男、次男は大学でスペイン語も学んでいるのですが、スペイン語を話すときには、英語回路を採用。末っ子は、ほとんど英語で思考しているようですが、なぜか掛け算するときには、日本語の思考回路を使っているようです。私が日本語で九九を教えたから? と思いますが、このあたりのスイッチの切り替えというか、感覚が私にはよくわからないのですが、ちょうど、みゆきりんさんの北京語みたいですね。ほんと、複雑です。

    うちの場合、末っ子の母語も日本語のはずなのですが、最近は、彼にとっての第一言語は英語なのかなと思います。もう、わけがわかりません……


    【ともこ】
    私は日本語以外の言葉では十分な表現ができないので、どうしても自分らしくない第2の人格になってしまう感じなのです。大人しい控えめな人に。周りは「日本人だから」と思っているようですけど、言葉の壁ってやつです。


    【やほい】
    「第二の人格がある人生」もおもしろいですね。冗談はさておき、ほんと言葉の影響って大きいですよね。人格も変えちゃうほど!(苦笑)


    【葉子】
    うーん、最近では英語を英語で考えるようになってきたかしら。ちょっとできるスペイン語は英語で考えています。とはいえ英語は相変わらず下手で、特に発音は子どもに直してもらっています!


    【やほい】
    確かに……大人になってからの言葉の習得は大変ですね。それがわかるからこそ、子どもにその基盤を作ってあげたいという親心もあるのでしょう。言葉の数だけ世界は広がり、将来の選択肢も増えるわけですから、苦労もあるけど、かけがえのないものだと思います。

    今回は、皆さんのご苦労や、実践ぶりを伺うことができ楽しかったです。奥の深いテーマでお話はつきませんが、またの機会にもっと核心に迫ることができるといいかなと思います。ありがとうございました。


    カテゴリ:『地球丸座談会』 | 03:09 | comments(1) | trackbacks(0) | - | - |
    コメント
    子どもへの日本語教育を含めとても参考になりました。
    日本に住んでおらず夫婦間が他国語だと、子どもへの日本語への語りかけや絵本の読み聞かせなどインプット量を作ってあげれるのは自分ですものね。

    数ヶ国語をネイティブとして扱う、というのは自分の経験としては持っていないのでなおさらその未知数を先輩方の経験談などを参考にさせてもらいながら、一貫性をもって多言語教育を(私は日本語で、旦那は英語で、住んでいるところはスペイン語です)していきたいと改めて思いました。

    とても興味深いテーマです。
    次回があればいいなあと期待しています。

    ありがとうございました。


    | 大田朋子 | 2010/05/06 1:13 AM |
    コメントする









    この記事のトラックバックURL
    トラックバック機能は終了しました。
    トラックバック