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第5回 日本と外国、ちょっと?なビジネスマナー座談会
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    ◆座談会参加メンバー◆

               
    ◆白石光代(グアテマラ在住)
    こちらに来て10年目となり、現在はガイド業を中心に、通訳、ライター、コーディネーターなどいろいろなお仕事をさせて頂いています。本拠地は世界一美しいともいわれているアティトラン湖畔ですが、仕事がら中米を飛び回る毎日です。

    ◆伊藤 葉子(Yoko Ito-Peterson)(アメリカ合衆国・ロサンゼルス在住)
    日本では大手建設会社と外資系の医療機器会社に勤務。米国では、日刊新聞社と週刊ビジネス新聞社に勤務。現在はキャリアチェンジのために、学校で勉強中。

    ◆長晃枝(東京在住)
    フリーランスライター。食べモノと旅モノをメインテーマに、雑誌、Webなどに執筆。旅行ガイドブックの編集も手がける。年に数回、おもに中国、韓国を中心に取材主張に出かける。

    進行役
    ◆夏樹(フランス・パリ在住)
    日本にいたのは24歳までで、就職はしませんでしたがバイトはなんでもやりました。フランスでは、教会というとってもコンサバな場で音楽関係の仕事もする傍ら、ライター、コーディネーターもしています。

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    今日は、国境を越えて活動しているメンバー4人で、各国のビジネスマナーの違いについて話し合ってみます。


    【夏樹】
     日本にいる方は海外在住の方と、海外在住の方は日本の方と仕事の面でメールや電話での交渉があると思いますが、びっくりしたり、不思議に思われることがおありでしょうか?


    【白石】
     今は慣れましたが、こちらの人は電話をしてきても名のりません。そのため話しながら想像しつつ相手を想定します。不思議と大体当たるようになりました。最後まで名乗らないときは、最後に「誰とお話させていただきましたか?」と聞きます。


    【夏樹】
     私は、初めての方からお電話をいただくことはあまりありませんが、メールをいただくことはよくあります。

     日本の方は、メールでもとても丁寧な文章をお書きになる方が多く、敬語を忘れてしまった海外在住者の私は、気後れしてしまうことがよくあります。一度、最後に「拝」と書いたメールまでいただき、ちょっと困りました。拝まれても困るんだけど……これは普通なのかしら?

     フランスでは、ここまで相手に対する尊敬の念を表現することは絶対にない、というか、そう簡単に相手に敬意の念をはらったりしないので、それに慣れてしまった私は、面食らいました。


    【長】
     最後に「拝」をつける方、ときどきいらっしゃいますが、日本でもまれです。私も何人かそのようなメールを下さる方とやりとりがありますが、たいていの場合、そういう方はどなたに対しても習慣のようにそうされているのであって、必ずしも大げさでない場合が多いように感じます。ご自身のことも「小生」であったりして……ある意味で、好みなのかと思いますが(笑)。


    【夏樹】
     反対に、若い方からいただくと、お目にかかったことがないのに、ハートマークや音符がついていたりして、おもしろいですね。「この人、何歳くらいなのかなー?」と想像してしまいます。


    【伊藤】
     これは私の夫の経験です。米国人の夫はフランス、ドイツ、スペイン、中近東、アジア諸国のお客様と仕事をしています。もちろん日本の顧客もいました。夫いわく、日本の方は礼儀正しく、仕事への責任感が強いそうです。しかも研究熱心で、夫の会社の製品を知り尽くしているとか。これで英語があともう少しスムーズなら、もう最高だと言っています。


    【長】
     中国にしても韓国にしても、取材時に現地で資料や画像をメールで送ってもらえるようにお願いしても、ふたつ返事のわりにはなかなか連絡が来ないことがよくありました。しかし、ここ数年、かなり迅速に、きちんとメールが来るようになりましたね。メールでのやり取りなどに慣れた人が増えてきた、ということなのかな?

     儒教思想の根強い韓国の人は、基本的に仕事上の相手に対してはやりとりなど、とても礼儀正しいです。


    【夏樹】
     よく行かれる海外の国、あるいはお住まいの国で現地の人々と仕事をするとき、ちょっと不思議に思うこと、「?」と感じることなどがおありでしたら、お教えください。


    【白石】
     挨拶が異様に長い。例えば会議が始まる前には、司会者が、次に代表者が挨拶をします。それから本題へ。日本の方へ訳しながら、あまりにも長くて申し訳ない気持ちになってしまうことすらあります。結構必要のないことを長々と話しているのです。

     1回の約束で物事は終わらない。なぜかいつも忘れられている、または覚えてはいるものの、足りないことだらけ。さすがにここに住んで10年目になるので、それを踏まえ計画しています。かえって仕事が1回で済んだら驚いてしまいます。

     計画性がない。用意していない。例えば今日学校でグリーティングカードつくりをするとします。前もってやることは分かっており、必要な材料も連絡してあるのですが、当日私が行ってから、先生は紙を買いに走り、生徒たちははさみ、糊をさがしに他の教室へ出て行きます。回数を踏むとある程度準備することを覚えてくれますが、ちょっと時間がたつとまた最初から。


    【伊藤】
     米国人の顧客サービス度の低さには、あきれます。お客さんに対する、高飛車な態度。明らかに自分が間違っていても、謝らない。ファーストフードで持ち帰りの注文をすると、注文したものが入っていないことがよくあります。スーパーでは、レジの打ち間違えが多いので、私はその場で必ず確認します。何十ドルも多く請求されたりしますからね。


    【長】
     何十ドルってことは1000円単位の間違いですね。それは大きい……。それに、欧米人のお釣りの計算方法は、私たち日本人には不可解ですよね(笑)。


    【夏樹】
     フランス人はメールが異様にシンプル。日本人のように「お世話になっております」「いかがお過ごしでしょうか」「桜が美しい季節になりましたね」の一言がない。「ボンジュール、この前の件について連絡はありましたか?」ズバリ、用件だけついてきます。仕事とプライベートを明確に分けるフランス人の態度がよく現れていると思います。終身雇用は公務員以外ないので、彼らには、同僚=友人ということはあまりないのではないかしら。すぐクビになるので職場を転々とするからかな? 友人は、まったく別の人々で、仕事関係の人とは、仕事の話だけしかしないのが普通という感じだと思います。

     仕事の要領という点では、個人差が激しいように思います。お役所仕事などの要領は「悪い」という印象がありますが、好きな仕事をしている人の中には、鬼のような集中力をもっている人もいますよ。ファッションショーの仕事をしていた友人がいましたが、日本のデザイナーは開始時間の3時間前にはスタッフが全員揃うように、各自の家にタクシーを迎えに送るほど用意周到。フランス人デザイナーのショーでは、スタッフが遅れて来るのは普通で、開始時間までダラダラおしゃべりしながら騒いでいるけれども、始まったらもの凄い速さで集中すると。どちらにしても、結果が良ければ言うことなしですね。


    【伊藤】
     仕事への集中力がすごいというのは、アメリカも同じだと思います。


    【長】
     お店の取材などの場合は、中国でも韓国でも、こちらが聞きたいことに充分な返事を得るのはなかなか大変。考え方や文化の違いでしょうが、日本人が求める「細かいこと」がどうもピンとこないようで「そんなどうでもいいようなことを、どうして詳しく知りたがるのか?」といった反応がしばしばありますね。

     また、店員が自分の店の住所を正確に知らないことなど日常茶飯事です。どうしてそれで困らないのか、こちらは不思議に思いますが、場所さえわかっていれば、そこに手紙を出すわけでもないんだから別にいいじゃないか、ということなんでしょうかね。

     ワールドワイドにチェーン展開しているようなクラスのホテルなどでは、基本的に英語が堪能な広報の方が対応してくれますが、そのような方はたいていは留学など欧米での海外生活の経験者ですので、こちらのニーズをすぐに理解してくれます。


    【夏樹】
     日本のビジネスマナーの中でいいなー、守り続けてほしいなと思うことはなんでしょう?


    【白石】
     時間を守ること。また遅れる場合はその旨連絡すること。
     グアテマラにおいてオラ デ チャピン(グアテマラ時間)=時間を守らない。と言う暗黙のルールがありますが、あくせくしてない反面、失っているものも大きいと感じます。


    【夏樹】
     白石さんに同感です。時間を守る、期限を守る、送ったものが着いたら返事をする、こういう日本の丁寧さは、とても気持ちが良いです。

     フランスでは、遅れるのはよくあること。コーディネーターをしていますが、日本から出される期限より、2週間ほど前を期限にしてフランス側には伝えます。期限内に書類ができあがることは、ほとんどないので……最後通牒は、まず「もうすぐ期限がすぎますが」と連絡し、次は「遅れていらっしゃるようですが」、最後に「いい加減にしてください!」とキレ、やっと念願のブツを手に入れます。日本人がキレると、結構ビビるようで、効果大です。


    【伊藤】
     そういう点では、アメリカ人は時間に正確ですね。仕事はもちろん、友人との約束でも遅れる場合は、ちゃんと連絡したりします。私が日本のビジネスですばらしいと思うのは、顧客サービスの質の高さですよね。デパートやスーパーでも、店員さんは礼儀正しくてプロ意識が高いと思います。


    【長】
     やはり、皆さんと同様、礼儀正しく、丁寧であることでしょうか。実際に今の若い人などを含めた日本人全般が本当にそうなのかは疑問ですが、現地では必ずそこをほめられます。

     時間については、「中国時間」「韓国時間」と言うこともありますよ。その他の国でも聞きますから、いいこととはいえ、日本がむしろ特別なのかな、と最近思います。

     その分、海外では日本人は時間に正確だというイメージがあるようですね。先日、取材の際に事前に連絡しておいたガイドさんがホテルのロビーに迎えに来てくれることになっていたのですが、出掛けに急ぎのメールが入ってしまって、私がちょっと遅れたら、すぐに電話がかかってきてびっくりしました。「日本人だから必ず時間通りにくるはずだから、来ないということはホテルが間違っていたのではないかと心配になった」と言われて、なるほどそういうことか……と。


    【夏樹】
     ご存知の海外の国でのビジネスマナーで、これはいい、気持ちいいと思うことはなんでしょう?


    【白石】
     気持ちがいいといえるのか、分かりませんが、時間に関しておおらかなことです。多少時間に遅れたからといって、待っている人がいらいらする事がありません。確かに時間を失ってはいますが、多少であれば、その時間が生んでくれるゆとり、人とのふれあいが存在すると感じます。

     必ず挨拶をすること。長すぎるきらいもありますが、相手を知ることは何より大切なことだとも思います。


    【夏樹】
     これも白石さんと同感。自分が遅れても許してもらえる!

     あと、前にも述べましたが、仕事の仲間=友人ではないこともあっさりしていていいかもしれません。たとえば、ゴルフにつきあわないと昇進できないとか、そういうことはないのでは? と思います。


    【伊藤】
     白石さんと同じで、ちゃんと挨拶することです。気持ちよく仕事をするには、まず“Hi(こんにちは)”ですよね。

     また会社関係のパーティーに出席するとき、夫婦同伴なことも好きです。配偶者の上司や同僚に会え、仕事を理解することに役立ちます。


    【長】
     夏樹さんとは反対に、アジアの人々はとてもベタなんですが、そこがいいなと思うこともあります。まぁ、ときおり度を越えておせっかいだな、ということもありますが、基本的にそれはほとんどの場合、善意ですね。韓国人は、最初からおおむね親切です。中国人は、信頼を得られるまではぶっきらぼうだったりしますが、よい関係を築くことができたら、その後はとても温かくて親切です。あと、人との結びつきを大切にするので、紹介者があった場合は最初からかなり好意的(笑)。よくも悪くもコネの世界なので、小さなツテでも生かしたほうがすべてがスムーズに行きます。場合によっては、それはとても仕事上便利だったりもします。


    【夏樹】
     海外で日本の方を仕事でお迎えしたとき思ったこと、あるいは、日本で海外の方をお迎えしたとき感じたこと、気をつけることなど、なにかありますか?


    【白石】
     どこでも同じですが、相手を尊重すること。また日本の方であっても、海外では相手国、相手を尊重していただくようにお願いしています。

     こちらの国の人は必ず相手の目をみて話します。もちろん相手に通じる言葉が話せるということも大切ですが、それ以上に相手をとらえる姿勢を持っている方は、言葉がなくても相手とのコミュニケーションがとれると感じます。


    【夏樹】
     お互いに、仕事には直接関係なくても、相手に文化背景を探ろうという努力は不可欠だと思います。

     あと、「フランス人はこうだから」とか、「日本人はああだから」という一般論はもっていても構わないのですが、その反面、一般論でくくれない新鮮な発見をする余裕ももてるようになると、楽しいと思います。


    【長】
     そうですね。国民性というのは確かにありますが、日本人だってみんなが礼儀正しくて時間に正確なわけではないように、当然のことながら、どこの国にもいろいろなタイプの方がいらっしゃるわけですし……自戒をこめて、思い込みは危険ですね。


    【夏樹】
     目線の問題はほんとうに微妙ですね。私も、昔は人の目を見て話すことができませんでした。でも、一度、「失礼だよ」と言われたので、仕方なく慣れたという具合です。


    【伊藤】
     確かに私達は人の目を見て話すのが苦手ですよね。自信を持って話すために、私自身はもっと英語を勉強しよう、と思っています! 米国人の仕事相手と、スポーツのように何か共通の話題があるといいのでは。東京の外資系企業勤務時代のことです。米国人の社長は、初めて接する日本人社員には、「好きな野球チームはどこですか?」と質問して会話を始めていました。これで社員はリラックスし、英語の壁は多少あっても、社長と“話したい”と感じていたようです。 


    【長】
     私は日本在住なので、私自身が海外にいて日本の方をお迎えするということはなく、また取材に出かける側なので、日本にいて仕事の関係の海外の方をお迎えすることもめったにありません。ただ、中国や韓国の方々とおつきあいする上で気をつけるべきことはあります。それは、彼らがとても面子や体裁を重んじること。ですから、人前で間違いを訂正するなど、恥をかかせるようなことは絶対にしてはならないということですね。あとは、日本との関係については、過去の経緯からして、複雑な思いを抱いている方も少なくありませんから、そのような話題には触れないことでしょうか。


    【夏樹】
     歴史観をもつのも大切ですよね。日本と相手の国に何が起きたか、どんな歴史をたどって今に至った国かを知っているだけでずいぶん違うと思います。そういうことも、相手に対する思いやりをもつことにつながるのではないかな、と思います。

     皆さん、ありがとうございました。「私も日本とフランスを出たら、案外、何も知らないんだな」と、実感しました。
    カテゴリ:『地球丸座談会』 | 00:00 | comments(1) | trackbacks(0) | - | - |
    コメント
    いつも参考にしております。
    また遊びにきます。
    ありがとうございます。
    | ビジネスマナー | 2010/07/02 11:40 PM |
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