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私、この子の親なんです
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    『この子うちの子』
    文:西川桂子(バンクーバー・カナダ)


     息子はティーンエイジャーとなった今でこそ、髪の色が濃くなってきたが、小さい頃はブロンド。「お母さんは日本人で黒髪なのにね」と、周囲の人たちに驚かれたものだ。一方の親が黒髪だと、子どもの髪は黒か濃い栗色が多いためだ。やわらかいブロンドヘアで、わが子ながらキレイな髪をしていると感心していた。

     しかし、ある日、ブロンドは考えものだと思う事件があった。

     息子が3歳すぎのかんしゃくをよく起こす時期だった。ショッピングセンターで見かけた玩具が欲しいと大騒ぎを始めたのだ。

    「ダメ!」
     と却下したが、ついには床に寝転がって泣きだした。

     起こして「ダメって言ったら、ダメ。ほら行くよ」と手を引こうとしたら、その手を振り払って、座り込んで泣いて動かなくなった。

    「じゃあ、10まで数えるよ。来ないとママ(私)はもう行くからね。1、2、3……」

     10まで数え終わったのに、座って泣いている。

     ここで負けたらしつけにならないと思った私は
    「じゃあ、ママは行くから」と言って、息子を残して行ってしまうふりをして、近くにあった大きな柱の後ろに隠れて様子を見ていた。

     すると、泣きながら追いかけてきたので、「よしよし。ダメなものはダメなんだから」と、涙でぐちゃぐちゃの顔を拭いていると、白人のおばさんが私たちのところに、つかつかと近寄ってきた。

     そして開口一番
    「あんたの雇い主の電話番号を教えなさい!」
    と聞く。

    「?」(何で私のボスの電話番号が必要なの?)
    「さっきから見てたけど、あんたの態度はナニー(注)として最低よ!」

     わかった。ブロンドの息子と黒髪の私の組み合わせ。特に私は色黒だし、バンクーバー辺りに多い、フィリピン人のナニーさんと間違えられたのだ。

    「この子、私の子どもだけど、何か!」と言うと、「それなら、いいわ」とばつの悪そうな顔でおばさんは去っていった。

     その話をすると、「XX君(息子の名前)、桂子さんにそっくりなのにね」と友人たちに大笑いされた。

     一方の親がインドや中国系などで黒い髪だと、やはり私と同じような経験をする人がいるらしい。アイルランド人と先住民の父母の間に生まれた義姉、レスリーもそんな一人だ。黒髪で顔もどちらかというと先住民の特徴が強い。スコットランド人と結婚したので、子どもたちは先住民の血が四分の一という計算になる。

     さて、姪たちだが、特に妹は見事なプラチナブロンドの髪にエメラルドグリーンの目。先住民の血が入っているとは、全くわからない容貌だ。「どこに行っても、ベビーシッターと間違えられて、親だと思ってもらえないの」と、いつもぼやいていた。

     業を煮やしたレスリーはブロンドに髪を染めた。成果はあったのか興味があるのだが、残念ながら教えてくれない。


    注)カナダのナニーはベビーシッター。住み込みも多いが、通常、フルタイム、つまり一日8時間程度、子どもの世話をしてくれる。ちなみに、カナダではメリーポピンズのような教育係的な意味合いはない。


    ≪西川桂子 (にしかわけいこ)/プロフィール≫
    フリーランスライター、翻訳家。3月に家族で日本へ里帰りをした。公園で子どもたちが遊んでいたとき、末っ子がジャングルジムから転落。頭から落ちたので真っ青になって駆け寄り、息子も「マミー」としがみついて泣いていたというのに、周囲の日本人のお母さんや子どもたちは「お母さんどこ?」

    またもや私が親だとは思ってもらえなかったようです。
    カテゴリ:『この子うちの子』 | 00:28 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
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