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「遊牧民のもてなしって……」
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    『こんなもの食べる?』
      文:郷らむなほみ(オンタリオ州・カナダ)


    「遊牧民のもてなしって…」

     アラビア半島で沙漠の民の栄養補給といえば、ウルトラ高カロリーのデーツ(ナツメヤシの実)だと言われている。まるで日本の干し柿のような甘さ、どんなに頑張ったって主食にはなり得ない。では、食事には一体何を食べるのだろうか?

     フィールドワークでベドウィンと暮らしたという片倉もとこ氏によれば、普段は野菜中心の食事を取っているらしい。郡部のガソリンスタンドにあるコンビニでも売られている平べったいパンとともに、ヒヨコマメ、オクラやズッキーニといった野菜が食卓に上るのだろう。

     日常生活ではベジタリアンの遊牧民も、旅の人や親類縁者などの客人があった時は、大盤振る舞いでヤギや羊といった家畜をほふるのだという。サフランやクローブなどのスパイスで調理された細長ライスの上に、デーンと鎮座して出て来るケダモノの頭! 

     これだけでもう、インパクトは特大級なのだが、客人には必ず、その眼球が勧められると言うのだ。

     うーん。初めてこの話を聞いた時、なかなか過激なもてなしですね……と、卒倒しそうになってしまった。沙漠でよく見かけるつぶらな瞳の子羊ちゃん、あの子のおめめが私の皿に乗るなんて。

     幸か不幸か、唯一私たちが招待された時は、どーんと大皿料理が並ぶ大広間に私たちだけ。

     先輩駐在員夫婦によれば、家人が誰もいない方が外国人の客はリラックスして食べられるだろう、という計らいなのだそうな。確かに、その心づかいは嬉しいかも。いきなり眼球を大勢の前で差し出されても、それはちょっと困る。

     しかしながら、ここでふっと沸き上って来る素朴な疑問。

     なぜ、眼球なのか。

     思うに、この目玉というのは、ゼラチン質でしかもタンパク質に溢れているのではないだろうか。荒野を長らく旅して来た者が不足しているであろう栄養分を、上手く補ってくれるに違いない。

     そして、何しろ眼球は一つの個体に2つしかないのだから、一頭ほふっても2人にしか行き渡らない。貴重な目玉で訪問者をもてなすというのが、アラブ式ホスピタリティーなのだろう。

     何ごとも必然があって生じたと思えるアラブの暮らし。

     仮にまたサウジアラビアを旅することがあって、もし眼球を出されたら、私は喜んで……夫に譲ろう。


    ≪郷らむなほみ (ごうはむなおみ)/プロフィール≫
    フリーランスライターで転勤族の妻。夫の赴任に強制同行、2003年〜2007年夏までサウジアラビアの首都リヤドに在住した。沙漠のオフロード走行に取り憑かれた元F3レーサーの夫に連れられて数々の沙漠旅行を経験、日本人未踏の沙漠体験多し。沙漠性気候の暑いアラビア半島に土着化しすぎて、極寒カナダの冬に脅えている今日この頃……。
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