<< 公務員が長期スト!? | main | 「雨水の利用」 >>
母親と息子の関係
0
    『ところ変われば……』
      文:冬野花(ニューデリー・インド)

     ところ変われば母子の関係も変わるものだ。日本では完全に「マザコン」と見なされるであろう光景が、母親と息子の間で普通に見られるのがインドである。

     インドには「親離れ、子離れ」という概念すらないと思われる。人生というものを、私達とは全く異なった観点から捉えているインド人には、この言葉はいくら説明しても、理解してもらえないだろう。これこそが文化ギャップというものだ。親子が、むしろそれを「理想的な事」として、一生ベッタリ依存しあって生きている様は、日本で育った私の目からすると、見ているだけで窒息しそうになる。

     例えば、バスや電車の中で、18歳や20歳くらいになった息子が母親の膝枕で眠りこける、母親がいい歳した息子の肩に体をあずけて眠る光景をよく目にする。インド人女性は子供を早く生むうえに、肉体的な老化が早いので、こちらとしては「奥さんだろうか?いや、母親……?」と戸惑うのだが、母親である事が多い。

     また、映画などでよく見られるシーンがある。それは、なんらかの不幸の真っ只中という状況(←インド映画では必須だ)で、白髪まじりの母親が、もう完全に大人の息子の胸に抱かれて、さも“か弱いもの”として号泣。母親を胸に抱いた息子も、天を仰ぎつつ、さめざめと涙を流して悦に浸る、といったもの。ヒーローにとって不可欠な “母親思い”という要素を描くために、わざわざ母親を不幸な状況に置いている場合が多いように思えるほどだ。未亡人で体が弱く、そのうえ地主からいじめられており、幸せとは無縁の人生を送ってきた40代後半で白髪まじりの母親、といった風でなければならないわけである。

     その他、恋人同士のシーンならうなずけるのだけれど……、といった母親と息子同士のシーンが満載なインド映画であるが、それら描写は私達の感覚からすると“母親思い”を遥かに飛び越え、時には禁断の近親相姦一歩手前に見えることもある。

     私はまだ子供を持っていないので想像する事しかできないのだが、将来、大人の男になった息子の胸に抱かれてボロボロ涙を流すなんて、あり得ない気がする。顔から火が出そうだ。むしろ、自分の涙は息子にだけは見られたくないと思っている自分なら想像できるのだが。

     母親と息子の関係。各文化において、いろいろな形が見られるものの典型と言えると思う。

    ≪冬野花 (ふゆのはな)/プロフィール≫
    2004年夏よりニューデリーに単身在住。ヒンディー語をしゃべりながら暮らす。フリーライターとして活動しながら時間を見つけてはインド国内旅行をする日々。夏は最も魅せられているヒマラヤ方面、冬はポルトガル植民地時代の面影が残るゴアがお気に入り。旅ルポ、アーユルヴェーダ、ヨーガに関しての執筆も得意。ホームページhttp://fuyuhana.wancoworks.com
    ブログ「心の暴風警報」 
    カテゴリ:『ところ変われば……』 | 00:03 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
    コメント
    コメントする









    この記事のトラックバックURL
    http://world.chikyumaru.net/trackback/328582
    トラックバック