プロバイダーの技?
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    「マイッタ!暮らしの中でみつけた技」
    文・ツムトーベル由起江(ドイツ・キール近郊在住)

     ドイツのインターネット・ユーザーの多くはプロバイダーのサポートに不満足だといわれる。カスタマー・センターの対応が悪いというのが大方の理由だ。私もネット接続に問題があれば日本との連絡や仕事もすべてお手上げなので、そのたびにカスタマー・センターとまさに「闘って」いる。最初の頃は、怒り心頭に発して電話を切った後、手にかいた汗で受話器はべとべと、息がきれてゼーゼー……という状態だった。最近では慣れもあり余裕も出てきて、プロバイダーの「顧客かわし技」が分析できるまでになってきた。その一部をご紹介しよう。

     まずは「待たせ技」。以前はいくら電話をかけても話し中でかわされたが、この頃は一応つながるようになった。しかし、始めの自動音声案内で苦情内容によるふるい分けがされ、何分かの待ち時間の後、一般担当者が出て、顧客番号やアカウントナンバーを聞かれ、また待たされ、やっとテクニカルサポート担当者にたどりつくまで、忍耐に忍耐を重ねて待つ。一説には、待たせて顧客の気勢をそぐのが狙いだとか。次に「たらい回し技」。担当者の肉声が聞こえると、顧客はこのチャンスを逃してなるものかと、抱えている問題をまくしたてるものだが、大抵一人目の担当者には「私はこの件の責任者ではないので、専門の者につなぐ」と冷たくあしらわれてしまう。一度など「専門家」が出てくるまで15分もかかり、あきれてしまった。

     そして「マニュアル技」。毎回聞かされる受け答えがそっくりなので、皮肉にもマニュアルを使った研修は行き届いていると言える。それはとりもなおさず親身になっていないということだ。一番よく耳にするのは「我が社のサイトにはトラブルシューティングのページがあり、ユーザーが自分で問題解決できるようになっている。こちらを試しても問題があるようなら再トライしてほしい」という答えだ。それも、こちらの状況説明にまったく耳をかさないでまくしたて、さっさと切ろうとする。はたまた、メールサーバーへのアクセス権を勝手に削除されたときなどは「この問題で困っているのはあなただけではない、同じような目に合っている顧客が大勢いるのだ」と、まるで文句を言っている私が大人気ないというような言われ方をされた。「気持ちはよくわかるが、この問題を引き起こした当事者は私ではない」という回答も笑える。当事者でなかろうと顧客対応をする担当者はプロバイダーを代表して話をしているのではないのだろうか。

     前出の自動音声では「このやりとりは、サポートセンターの研修などに使用する目的で録音されることがあります」という文句が流れるが、私の怒りに燃えた言葉の数々が研修に活かされる日がいつか来るのだろうか。日本のようにすぐ謝るのもどうかと思うが、せめて困っている私の話を真剣に受け止めて欲しいと切に願うこの頃である。

    ≪ツムトーベル由起江/プロフィール≫
    レポート・翻訳・日本語教育を行う。1999年よりドイツ在住。ドイツの社会面から教育・食文化までレポート。ドイツ人の夫、7歳の長男、4歳の長女、2歳の次女とともにドイツ北部キール近郊の村に住む。今年庭で大豊作のキイチゴで夫が毎日ジャム作り。私が作るよりずっと上手!
    カテゴリ:『マイッタ!暮らしの中でみつけた技』 | 00:04 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
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