芸術的才能を発掘、そして育てる教育(アメリカ合衆国)
2008.05.25 Sunday | by chikyumaruz
文:椰子ノ木やほい(ミシガン州・アメリカ合衆国)
芸術教育というと、堅苦しく聞こえるかもしれないが、ミシガン州ではハイスクールの生徒たちを対象に、毎年ユニークかつ大掛かりな取り組みが行われている。
ミシガン・ユース・アーツ(Michigan Youth Arts)という名で親しまれる年に一度のこの祭典は、ミュージックキャンプで有名なインターラーケン・アート・キャンプの創設者、Dr.Joseph E. Maddy により、1963年に設立されたもので、以来、“ミシガン州”の若い芸術家の卵を発掘し育てる由緒ある祭典として毎年、5月にウェスタン・ミシガン大学において開催されている。
音楽に関して言えば、参加希望者の多くはハイスクールで吹奏楽や管弦楽などを学ぶ生徒たちで、予選とも言えるソロ&アンサンブルというコンテストに参加し、良い成績を得た生徒だけがその先のオーディションへと進み、さらに選抜を通った者だけが祭典に参加できる。
こうして、州内25万人のハイスクールの生徒の中から約9ヶ月かけて、音楽をはじめとし、ダンス、ビジュアルアート、演劇など多彩なジャンルに及ぶ卓越した才能を持つ生徒を選りすぐり、野球でいうなら差し詰め、オールスターチームのようなミシガン州ハイスクールレベル最強の合唱団、オーケストラ、ジャズバンド、シンフォニックバンドを作り上げる。
ジャンルごとの選抜を通り抜けた若き将来の芸術家が、会場となる大学のキャンパスに一斉に集い、それぞれのフィールドで2泊3日のキャンプをしながらみっちり合同練習をする。講師には、各分野で活躍されている著名な大学教授や音楽家が迎えられ、参加者の指導にあたるというのも、この祭典に参加する大きなメリットだ。初顔合わせから3日目にはプロ顔負けのパフォーマンスを披露してくれる。州内各地から集る生徒たちは、新たな友情をみつけたり、新しい刺激を受けたりと実りある時間を過ごす。
芸術というジャンルは、高校受験や大学受験のある日本では、ひとつの教育としてなかなか定着しがたい分野かもしれない。しかし、スポーツや芸術は私たちの暮らしや心を豊かにしてくれる。芸術のない世界で生きるのは味気ないものだ。そう思うと、豊かな社会を築くため、子どもたちに備わった才能を発掘し、育てることは教育に携わる大人たちの義務とも言えるだろう。
≪椰子ノ木やほい/プロフィール≫
たまたま今年、我が息子が州代表ジャズバンドのトランペッターに抜擢されたため、キャンプを見学、そして公演を観る機会を得た。オーケストラ、合唱、ジャズバンドなど、とてもハイスクールの生徒とは思えないパフォーマンスを見せてれた。カーネギーホールを想わせる大きな劇場に惜しみない拍手と割れんばかりの歓声がいつまでも響いていた。参加した全ての子どもたちの将来がほんとうに楽しみだ。ブログ:みしがんでいず