白でトータルコーディネート(ネパール)
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    『世界の冠婚葬祭』
    文:うえのともこ(ネパール・カトマンズ在住)


     街中で時折見かける全身白尽くめの男性たち。大抵は白い帽子も被っている。帽子の下はと言えば丸坊主。しかしつむじの部分に一束だけ剃る前の長い毛髪を残している。このちょろっとしたねずみの尻尾のような部分を「トゥピ」と呼ぶ。なぜこのようないでたちをしているのか? 親族(両親、祖父母、配偶者)を亡くし、喪に服している期間だからだ。
     
     足元は白いスニーカー、靴下、ズボン、シャツ、セーター、ジャケット、マフラーまでも白で、頭もスースーするから野球帽やニット帽なんかを被る。アンダーウエアももちろん白だろう。(未確認)白に準ずると思われる生成り、クリーム色、肌色、ベージュくらいまでがOKラインなのか、そんな控えめなグラデーションになっていることも。

     ある初老の男性は、手編みと思しき複雑なアラン模様を編みこんだ生成りのフィッシャーマンズセーターを着ていて、おや、何気にかわいいじゃない?と思わせた。海のない国でアイリッシュフィッシャー風だなんて本人は露とも意識していないはずだが。一方、登下校中の制服を着た元気な小学生の集団に、一人坊主頭で真っ白な服装の男児を見つけると痛々しい。

     さて、モーターバイクの運転者にはヘルメット着用が義務付けられているが、このような全身白の人たちはノーヘルが許可(黙認? )されているようである。わざわざ白いヘルメットまで買う必要はないということなのだろうけれど、バイクに乗る時でさえ、白以外の色を決して身に着けないという徹底ぶりに、大概のことには大らかでいい加減なネパール人がそこまでこだわるどんな理由があるのだろう? と気になるではないか。生きている人間の安全面よりも伝統としきたりを重んじるこの国らしいといえば納得。

     女性の場合は配偶者が亡くなった場合のみ、白いサリーを着て、最短でも13日間、長い場合は数ヶ月家から出ないようにして過ごすそうだ。だから白装束の女性を街で見かけることがないというわけだ。白いサリーやクルタスルワール(※)を着ている女性は看護師か看護学生なのでお間違いなく。

     服喪中の決まりはほかにもあり、最低13日間、塩を口すべきでないとされていたり、毎年命日には丸めたご飯(ピンダ)を死者のために川に流したりする。私が頬張るおにぎりにネパール人の異様な眼差しを感じるのは、これが理由らしい。

    ※ブラウス、パンツ、ショールの3点スーツ。パンジャビドレスなどとも呼ばれる。

    ≪うえのともこ/プロフィー ル≫
    実は服喪中の人以外に、常にノーヘルを黙認されている人々がいる。それはシーク教徒の男性たち。ネパールでは少数しか見受けられないが、頭にグルグルとターバンを巻いているのですぐにわかる。やはり安全規則より信仰や伝統が重んじられているのね。よく見ればなるほど、しっかりと巻かれていてヘルメットよりもプロテクト効果大かも。かれこれ在住のべ5年。「ネパールの達人」 としてブログで情報発信している。
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    リゾート地ならでは! ゴルフ場ウェディング
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      『世界の冠婚葬祭』
      文:ケイブ(ゴールドコースト・オーストラリア在住)

       私はゴルフ場で結婚式を挙げました!意外な場所だと驚かれましたか?ゴールドコーストは、1年を通して温暖な気候のため野外ウェディングが一般的であり、ゴルフ場ウェディングは実は人気のスタイルのひとつなのです。

       ゴルフ場などで式を挙げる場合、マリッジセレブラントと呼ばれる結婚執行人のほかに証人2名がいれば、法的に結婚が成立します。その他には、教会での牧師さんによる式や日本でいうと家庭裁判所のような役所で式をあげる方法があります。

       結婚式の準備は新婦とその家族が担当。招待状、花束、ケーキ、車の手配など一切を仕切るのです。はっきりいって新郎は当日正装をして現れるだけ。以前は結婚費用も新婦側が持つ風習だったよう!費用に関しては、その逆の認識をしていたので驚きの事実でした。

       さてゴルフ場でのウェディング。澄み渡った青い空ときれいに整えられたグリーンのコントラストはとても美しく、晴れの日のムードを高めます。招待客はみんなサングラスをかけて出席しているのもオーストラリアらしい風景。式が終わると、シャンパンを飲みながら歓談します。

       そして、新郎新婦は写真撮影のため、ゴルフコース内の噴水やグリーン、思い思いの場所をプロのカメラマンと一緒に出かけます。街中やビーチに出かけるカップルも多く、短くても1時間半、なかには4時間もかけて撮影するカップルも!それだけにそのまま書店に並べてもいいようなステキなアルバムに仕上がるのです。

       写真撮影から新郎新婦が戻ると披露宴の始まりです。ゴルフ場のゲストハウスでのパーティはカジュアルなスタイルが多く、立食パーティを選ぶカップルが多いようです。パーティでは、まず新郎が挨拶をし、その後、新郎の父親、新婦の父親と挨拶が続き、一通り挨拶が終わると、新郎新婦も混じって食事を楽しみます。

       パーティも後半になると、新郎新婦によるブライダルワルツの始まりです。このときの選曲は2人の一生の思い出の曲となるのです。私はこのワルツのために事前に何度も練習をしました。新郎新婦によるワルツが終わると、それぞれの両親がダンスに加わり、その後招待客らが次々とダンスの輪に混じり、ダンスパーティ会場へと変貌していくのです。

       ダンスパーティでひとしきり盛り上がった後、招待客たちはそれぞれ時間を見計らって会場を後にします。最後に会場に残るのは新郎新婦と家族。日本とは逆に、新郎新婦が招待客を見送るのです。会場が許す限り、たいていの場合深夜11時過ぎまでパーティが続くという本当に長い一日なのです。

       ちなみに新婦は、お色直しはせず一日ウェディングドレスで過ごします。ドレスは、レンタルよりも購入する人が多く、その後もずっと手元に残します。将来、娘や孫が自分のドレスを身に着けてくれる日が来たら、それはとても素敵なことだと思います。


      ≪ケイブ/プロフィール≫
      日本での外資系ITメーカー勤務の後、海外生活を実現させるためオーストラリアに渡る。ITマネージメントを現地大学院で学んだ後、永住権取得。現在は、一男の母、主婦、そしてIT関係でパートタイムで働く日々。次なる夢はエッセイストとして活躍すること。がんばります。
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