グーディスは週末のお楽しみ
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    『世界の駄菓子』
    文・写真:田中ティナ(スウェーデン・エステルスンド在住)


    「今日は土曜日。“Lördagsgodis(ローダスグーディスと読み、日本語で『土曜のお菓子』の意)”買ってもいいでしょ。ねぇーっ」。

     週末、スーパーで買い物をしていると、子どもたちのせがむような声が聞こえることがある。近年太り気味の子どもたちが増えてきたせいか、はたまた虫歯にならないようにとの配慮からか、それともしつけのためなのかは定かではないけれど、「甘いものは週末だけの特別なお楽しみね」、という家庭が多いためだ。

     なくても生活に支障はないけれど、あればより楽しい気分になれるお菓子。ピンク、赤、緑に黒など色とりどりで、キノコにイチゴやドクロなど形もさまざまなグミをはじめ、各種キャンディやチョコレートなど、豊富な種類から、好きなものを好きなだけ袋につめて購入する、量り売り形式。口の中に広がる甘さはもちろん、ビジュアル的にも子ども心のみならず、子ども時代を懐かしむ大人心をくすぐるラインアップが揃っている。週日とはちょっと違う特別の日、週末だから口にできるグーディス。「毎日、好きなだけいくらでも食べていいよ」といわれたら、楽しみも激減することだろう。

     そして、販売店側も考えたもので、買い物の最後、清算をするためにレジに並びながらどうしても目に入ってしまうような場所にグーディスコーナーを設置している。つまり、スーパーに行けば週末のみならず年中、「おいしいよ。さあいらっしゃい」と私たちにささやきかけている。親が、「グーディスは週末だけ」と決め、子どもたちが日々の誘惑に打ち勝つのはホント難しそうだ。

     さて、このグーディスの中で、個人的にどうしても好きになれないのが、甘草やアニスの香りが特徴の真っ黒なリコリス。なかでも、塩味風味のリコリスを口にしたときの驚きと強烈な印象は、今でも心の隅にしっかりと残っている。友人は「これがおいしいんだよねぇ。エッいらないの。じゃ私が」と嬉しそうにつまんでは、ポイポイと口に入れている。味の好みは本当に千差万別。

     ところで、ある研究によると人工着香料や着色料を使った食品は、落ち着きがなかったり、集中力が続きにくい状態、「ハイパーアクティブ」の原因として注目されているという。製造会社は「安全な材料を使っている」とのことだが、おいしい味と夢を運んでくれるグーディスが末永く、肉体的にも精神的にも私たちの味方になってくれるように、と祈っている。

    魅惑のお菓子がぎっしり詰まったグーディスコーナー。
    魅惑のお菓子がぎっしり詰まったグーディスコーナー。好きなものを好きなだけどうぞ。


    これが黒光りするひも状リコリス
    これが黒光りするひも状リコリス


    ≪田中ティナ/プロフィール≫
    フリースタイルのジャッジとしてソルトレイク、トリノオリンピック、ワールドカップの審判を、また、2007年イタリアの世界選手権では主審を務める。真剣勝負に挑む選手の演技に負けないように、ジャッジングの技術の向上に努力中。海外情報やこぼれ話をはじめ、スポーツの面白さも皆様にお届けしていきたいと思っている。
    カテゴリ:『世界の駄菓子』 | 00:04 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
    家庭内論争の主役?!オランダの駄菓子
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      『世界の駄菓子』
      文・写真:澤野禮子(オランダ・アムステルダム在住)


      「今日はヘビ食べる?それとも,クモ?」
      「うーんとね、毛虫がいいや。ある?」
      「ない」
      「あっそ。じゃ、クモでいいや。クモ頂戴」

       ちなみにこれは、万国ビックリショーで交わされる会話を抜粋したものではない。ごく普通のオランダの子供たちが日常口にするフレーズである。それにしても、かなり気色が悪い。ヘビ食べる?とは、一体何ぞや?実はこれ、駄菓子について話し合っているのだ。オランダの駄菓子は、総称でSnoep(スヌープ)と呼ばれる。これは実際、ただのグミ菓子であって、日本の駄菓子のように、バラエティに富んでおらず、結構味気ない。その代わり、その形態は軽く500種を超えるのがミソで、ありとあらゆる色や形が揃っている。従って、ヘビとかクモの形をしたものも当然存在するというわけである。
      この、縄のようなスヌープは、通称・“タウ(紐)“。最も人気があるスヌープのうちのひとつ。
      この、縄のようなスヌープは、通称・“タウ(紐)“。最も人気があるスヌープのうちのひとつ

       このスヌープを買うには薬局へ行く必要がある。何だか意外な感じがしないでもないが、大手薬局でだけ販売されているためだ。このスヌープ、子供に限らず、女性にも大人気。つまみながら出勤するOLもいるし、家庭の主婦らは、体重を気にしつつも、スヌープ・ジャンキー(駄菓子漬け)と称してはばからない人もいるほどである。

      スヌープの形態は千差万別
      スヌープの形態は千差万別

       また、家庭内問題の核となる存在でさえある、といったら大袈裟に思われるだろうが、このスヌープ、嫁姑問題の理由第1位の座を獲得したという統計まであるくらいだ。歯に悪いという理由で大抵の親が買い与えないスヌープを、おじいちゃん、おばあちゃんの世代が、孫を溺愛するが余り、これでもかと与えるため、親子2代の間でスヌープ賛否両論が交わされることとなり、下手をすれば絶縁に発展するまでの家族会議を、堂々と提供してしまう存在なのである。

       たかが駄菓子、されど駄菓子。生活に密着しすぎた感のあるスヌープだが、オランダにお越しの際は是非一度、お試しあれ。やみつきになること、請け合いだ。これならば、家族内で物議をかもし出すのも無理はない味、かも!?

      ≪澤野 禮子 (さわの れいこ)/プロフィール≫
      最初スヌープを見たとき、その着色料のどぎつさに驚いたが、それもはるか昔のこととなってしまった。幸い我が家では、家庭問題が引き起こったことはないが、自らも、りっぱなスヌープ・ジャンキーと認めている。
      お気に入りは、日本でも人気のHARIBO。





      カテゴリ:『世界の駄菓子』 | 00:02 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
      くまちゃんグミ(ドイツ)
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        『世界の駄菓子』
        文・写真:ツムトーベル由起江(ドイツ・キール近郊在住)

        くまちゃんグミ

         ドイツの駄菓子代表選手はなんといってもグミだろう。小児科で注射のチクッ!に我慢できたら、グミ。誕生会におよばれしてもらうお返しの小袋に必ず入っているのも、グミ。いたるところでグミをもらい食べている。中でも人気不動なのが、くまのかたちをした通称Gummibärchen――くまちゃんグミ(私訳)――だ。ゴールドベア(Goldbären)という正式名があるのだが、なぜかみんな親しみをこめて通称で呼ぶ。

         このグミの生みの親は、1920年にボンでHARIBO社を創立した飴職人ハンツ・リーゲル氏(社名はHans Riegel Bonnの頭文字をとっている)。当時まだ巷でよく見られた曲芸するくまの姿と、人気沸騰中だったくまのぬいぐるみをモチーフに、1922年くまちゃんグミを誕生させた。当初は数名の従業員がグミを町工場で作り、自転車で配達していたという。その後、くまちゃんグミや姉妹商品の人気のおかげで事業は拡大し、同社は現在約6,000人の従業員と欧州18の拠点をかかえる一大メーカーとなっている。

         世界中100以上の国に輸出されているそうだから、日本でもその愛らしい姿を目にされた方が多いのではないだろうか。こぐまが「たっち」をした姿と、ストロベリー、レモン、オレンジ、ラズベリー、パイナップルそれぞれの味に合わせた色で目も楽しませてくれる。これまで5つの味で親しまれてきたが、生誕75年の記念すべき昨年、新しい味アップルが登場した。ちなみに青色のくまちゃんがいないのは、果実や植物から抽出した着色料のみを使用しているからなのだそう。また、気になる原料のゼラチンも豚由来のものに限定し、子どもの健康への配慮を前面に打ち出している。

         ドイツのスーパーに行けば、グミは菓子売り場の実に3分の1を占めている。なぜこんなに人気なのか。大きすぎず柔らかいから小さな子どもも喉につめない、甘すぎないし低カロリーでお腹にたまらないから食事の妨げにもならない、など様々の理由はある。でも実際に子育てしてみて気づいたのは、何はさておき、グミが「汚くしない」菓子だということだ。クッキーのようにぼろぼろこぼれないし、チョコのように手や服もべたべたにならない……。小さな子どもを持つ親にとって、これは意外に大きなポイントなのだ。子どもに人気と思われているグミ、実は大人を喜ばすお菓子なのかもしれない。テレビでは今日も50年代から変わらないCMソングが流れる。♪HARIBOで子どもはハッピー。そして大人もハッピーに。♪まったく仰る通り……。


        ≪ツムトーベル由起江/プロフィール≫
        レポート・翻訳・日本語教育を行う。1999年よりドイツ在住。NHKラジオジャーナル、MAGAZINE ALCなどで、ドイツの社会面から教育・食文化までレポート。ドイツ人の夫、6歳の長男、4歳の長女、1歳の次女とともにドイツ北部キール近郊の村に住む。趣味は楽しいドイツの絵本をみつけては買ってきて、即興で日本語に訳し読み聞かせること。
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