皇帝やブラームスも愛した岩塩?(オーストリア)
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    『こだわりの調味料』
    文:パッハー眞理 (ウィーン・オーストリア )


     オーストリアの一般家庭で欠かせない調味料は、やはりバード・イシェル産のハーブ入り岩塩ではないか?

     ローズマリー、バジル、フェンネル、コリアンダー、タイム、パセリ、月桂樹、などの7種類のハーブを含んだ調味料は、サラダをはじめとして、煮込みにもよし、中華の炒め物にもよしで国際色豊かな全ての料理と相性がいい。

     ザルツブルグ近郊のバード・イシェルには岩塩の鉱脈がある。塩分を含んだ鉱泉を利用したオーストリア最古の湯治場だ。ヨードの濃い塩がとれる。そして岩塩を含む飲用温泉水が出るため、"飲む温泉地"としても知られている。もちろん、水着使用なら温泉につかるのも結構だ。

     この土地はフランツ・ヨーゼフ皇帝が彼の生涯の殆どを過ごした事で有名だ。皇帝は別荘を建て、皇室専用のチャペルも作らせた。皇帝の行くところには貴族ありで、一帯には優雅な雰囲気がかもし出されていた。また作曲家ブラームスも弦楽五重奏曲第2番,クラリネット三重奏曲などの名曲をこの地で作った。
    バード・イシェル物語という私が今回参考にした文献は大ミスをおかしていました。私も首をひねっていましたが、本当に彼はこの地で交響曲は書いていませんでした。さっそく訂正しておきましたよ。ありがとうございました!

     私はここ何年もこのハーブ入り岩塩を愛用をしていて、切らすことがない。日本に帰国する際にも必ずトランクに何本かしのばせて行き日本滞在中に料理するときはこっそり利用している。皆に好評である手料理だが本当は私の腕がいいのではなく、7種類のハーブ入りの塩のおかげなのだ。でも家族、友達には調味料のことは特に披露していない。せめて、日本では『オーストリア郷土料理の達人』と思わせておこうではないか。


    ≪パッハー眞理(ぱっはーまり)/プロフィール≫
    ウィーン生まれで東京育ち。ピアノ教師兼ライターとしてウィーンに暮らす。とうとう海外生活は33年目に突入。日本にいた時よりもはるかに外国暮らしが長い。毎日愛犬コッカースパニエルと自然の中を散歩して気分転換をはかっている。UCC上島珈琲、新卒OLを元気にするサイトの特派員もつとめホットな話題を提供している。オーストリアプレスクラブコンコルディア会員。著書 『アウガルテン宮殿への道』ショパン刊がある。
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    ヒマラヤ岩塩 (ネパール)
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      『こだわりの調味料』
      文・写真:うえのともこ(カトマンズ・ネパール)
      ヒマラヤ岩塩 

       妖しく光る黒い塊。

       ヒマラヤ奥地で採れる"ビレヌン"とは「太古の塩」を意味する紫岩塩だ。その名の通り数億年前の海水が、マグマによって熱せられ出来上がったものと言われている。かつては遥々チベットから、ヤクやロバの背中にこの塩を積んだ行商人が交易路を経てインドまで運んでいたため、そのルートは「塩の道」と呼ばれていた。

       日本でも健康ブームに乗って「ヒマラヤ岩塩」は注目され、高級な塩として高値で売られているようだが、こちらネパールでは、市場、路上、スーパーマーケット、どこにでも置いてある安価でポピュラーなもの。ミネラル豊富で、硫黄の匂いと独特のうまみ成分をもつ。調理にはもちろん、民間療法として内服、外用薬にも利用されている。ヒマラヤ岩塩にも数種類あり、紫のほか、ピンク、白それぞれ別の名称、効用がある。

       さて、トレッキングに出かけ、お茶屋で紅茶を頼むと"ビレヌン"入り紅茶が出てきて、知らずに飲むと「ウゲっ」と目を白黒させられることがある。ビレヌンは疲労回復をすばやく助け、胃腸の調子を整える働きもあるとのこと、トレッカーにはうってつけの飲み物というわけだ。

      冷たいレモンソーダにも入れられる。これもかなり「ウゲっ」。 グラスの底に黒い粉がジャリジャリ溜まっているなんて何かの間違いでは?と思ってしまうが、慣れると"ビレヌン"なしでは物足りなさすら感じるから不思議。生パイナップルやコケモモにも付き物と言っていいほどの定番パートナー。果物に塩だから、陰陽のバランスはバッチリ!これが正しいネパール式食べ合わせなのだ。

       硫黄の香りはさながらゆで卵。生野菜にふりかけて、オイルとビネガーで和えれば、ベジタリアンのエッグサラダに。スープに加えるとだしが必要ないほど、コクのある味わいとなる。茹でたパスタにオリーブオイルと"ビレヌン"のみという究極にシンプルな料理さえも成立する。ネパール製ポテトチップスにはプレーンとマサラ味があるが、プレーンは思いっきり"ビレヌン"風味仕立てとなっている。

       調味料としてだけでなく"ビレヌン"の毒素排泄を促す効能は高く、一掴み湯船に溶かせば"ヒマラヤ温泉"湯治場に。しっかり発汗でき、身体の芯まで温まって、お肌すべすべ、スッキリ爽快!

       どこかの販売業者のような口上になってしまったが、とにかく大変利用価値のあるヒマラヤの恵み、我が家の台所とバスルームに欠かせない、優れた天然健康食品であることに間違いない。

      ≪うえのともこ/プロフィール≫
      カトマンズのトレッキング旅行会社で雑事を手伝っているくせに、自身は3日間のハイキング経験のみ。チベット文化が色濃く残る「塩の道」をキャラバン隊を引き連れトレッキングしたいと思っている。機会があれば塊の"ビレヌン"を家庭で利用するときの調理器具についてもご紹介したい。
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      英国系カナダ人が愛するソースの神様 (カナダ)
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        『こだわりの調味料』
        文・写真:西川桂子 (バンクーバー・カナダ)

         夫が“Sauce of the Gods(ソースの神様)”と呼ぶソースがある。HPソースだ。

        HPソース

         このHPソースは、HP Foodsという会社が英国で生産していたブラウンソース。マヨネーズにキューピーや味の素があるように、特定の会社のブラウンソースだ。現在では、ハインツ社がHP Foodsを買収して、オランダで作られているが、100年以上の歴史を誇り、英国人の食卓には欠かせない調味料だという。

         英国人の父親を持つ夫にとっては、子どもの頃から親しんできた、お袋の味ならぬおやじの味だ。同様のブラウンソースが数種類あるようだが、HPソースが一番美味しいと主張する。成分には、リンゴやオレンジの果汁、ナツメヤシ、スパイスなどとともにビネガーが入っていて、私にとっては少々酸味が強い。

         夫はソースの神様と呼ぶほどだから、ハンバーガー、ステーキなど、何にでも使う。意外なところでフレンチトースト。多くのカナダ人が使うメープルシロップではなく、HPソースをつけて食べる。砂糖を使わず、牛乳と卵とパンだけで作るのがポイントだ。変な奴とは思うが、「糖分の摂取過剰気味なので、まぁいいか」と“傍観”している。

         しかし、許せないのは、私が車を飛ばして、わざわざ韓国スーパーで買い付けてきた味つけプルコギ(韓国焼肉)にまでつけてしまうことだ。折角の味がブラウンソースで消されてしまう。しかし、彼はHPソースが焼肉のたれを引き立てていると豪語する。

         このように、今でこそ“文句タラタラ”の私だが、カナダに来たばかりの頃は、とんかつやお好み焼きにと、HPソースにはとてもお世話になった。お好み焼きソースは当時、6ドル(600円)以上もして、私にとって簡単に手が出る値段ではなかった。HPソースは、お好み焼きソースに比べると、甘くはないし酸っぱいのだが、ケチャップと混ぜたりして、特製ソースのベースにしていた。

         日本にも何にでも醤油をかけて食べる人や、マヨネーズを愛するマヨラーがいるそうだから、HPソースさえあれば幸せという夫のことも、長年培われた味覚と考えると何とか納得がいく。毛嫌いしないでうまく使うと、シチューなどの隠し味にもなる便利な調味料だ。

        ≪西川桂子(にしかわけいこ)/プロフィール≫
        フリーランスライター、翻訳者。まっぷるマガジンカナダ(昭文社)、海外女性通信(婦人公論)他、3児の母の立場から、海外での子育てなどについても執筆。今年度で、一番上の息子は小学校を卒業。未知の世界にちょっぴり緊張する一方、これからはカナダの中学生について、もっと紹介できそうだと期待もしている。
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        アメリカの万能調味料 ホットソース(アメリカ合衆国)
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          『こだわりの調味料』 
          文・写真:ユカリ・トラビス(ロサンゼルス・アメリカ合衆国)
           
           ビリリッと辛さが頭に突き抜けた直後、爽やかな酸味が広がり、最後にジワッと旨みが湧いてくる……。北アメリカ及び中南米在住者が愛用するホットソースの味を説明するとこんな風になる。

           ホットソース=タバスコと思ったら大間違い。アメリカにはタバスコ以外にも数多くのホットソースが流通している。例えばハリウッド付近の老舗専門店「ライト・マイ・ファイヤー」が扱っているホットソースは三百種類以上。店の壁という壁が赤い小瓶で埋め尽くされている様は圧巻だ。オンラインストアでは千種類近くを取り揃えているところも。ごく一般的なスーパーでも、タバスコやルイジアナ・ホットソースなどの有名ブランドを中心に5、6種類は置いているのが普通だ。

           こんなに数多くのホットソース出回っている理由の一つは、ホットソースには材料についての決まりがほとんどないためだ。ホットソースとはチリを使ったソースのことなので、辛味の主成分はハラペーニョなどのチリでなければらない。アメリカではこれに酢を加えるのが一般的だが、他の材料は全くの自由。そのため各地の愛好家がニンニク、マンゴー、ニンジン、バーボンなど、好き勝手なものをぶち込んで“マイ・ホットソース”を作り出し、それに「Satan's Blood(悪魔の血)」だの「Sudden Death(突然死)」などというこれまた好き勝手な名前をつけて売り出している。まるでインディーズのバンドが自主制作CDをどんどん出しているような状況なので、やたらと数が増えてしまっているのだ。
          我が家で今使っているホットソース「フランクス・レッドホット」。タバスコに比べると酸味が弱く、チリの旨みが全面に出ている人気商品。

           そんなホットソースの使い方だが、こちらにもルールと言えるようなものはほとんどない。最も一般的なのは卵料理やサンドイッチのチーズにピピッと数滴ふりかけるというもの。辛さがしつこさを中和し、食欲がぐっと増す。他にもトウモロコシの丸茹で、パスタ、スープ、トマトジュースなど、ホットソースの使い道は様々。何にでも気軽に使えるホットソースは、一味足りない料理を変身させる万能調味料なのだ。

           ただ唯一の欠点は、醤油と同じで「つい何にでもかけたくなってしまう」ということ。辛党の私などは、ふと気づくとおかずの全てをホットソース味で食べていた、なんていうことも。アメリカには何にでもホットソースをかけなければ気がすまない “チリ中毒患者”が多く存在する。使い過ぎにはくれぐれも注意しよう。


          ≪Yukari Travis(ユカリ・トラビス)/プロフィール≫
          ロサンゼルス在住14年目に突入したフリーライター。フード専門誌、留学専門誌、子ども用英語教育誌などを中心に活躍中。2児の母。最近は特にアメリカの食に関する問題と、それを解決するための食育などの試みに特に関心を持っている。趣味はコロコロ変わるが、今凝っているのは最近始めたばかりのスケートボードとエアルームトマトと呼ばれる在来種のトマトの栽培。アメリカの食についてのブログ:、ホームページ:http://yukaritravis.tripod.com/
          カテゴリ:『こだわりの調味料』 | 00:03 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
          インド料理の縁の下の力持ち (インド)
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            『こだわりの調味料』 
            文・写真:冬野花(ニューデリー・インド)

             スパイスの事をヒンディー語で「マサラ」と言う。日本のスーパーでも売っている「ガラムマサラ」は直訳すると「熱いスパイス」という意味だが、この場合の実際の意味は「万能混合スパイス」といったところだろうか。つまりインド料理を作るうえで、「だいたいコレとコレとコレを入れればOKだろう」という数種類〜十数種類のスパイスを砕いて混ぜ合わせたものなのである。「ガラムマサラ」はインドでは自宅で調合して作るもの。一昔前の日本のそれぞれの家庭に“うちの母ちゃんのぬか漬け”があったように、インドのそれぞれの家庭には“うちのガラムマサラ”がある。要は、インド料理においては、それほどまでに「マサラ」が基本かつ重要だということである。

             さて、そんな“マサラ”なインド料理であるが、相当数あるスパイスの中から今日紹介するのは日本ではあまり聞き慣れない「ヒング(hing)」というスパイスだ(どこかの家のガラムマサラに入っている事もあれば、そうでない事もある)。ヒングはセリ科の植物の根から採取した液を固めたもので学術名はアサフォエティダ(Asafoetida)と言う。日本語の感覚で言うと、スパイスというよりは、エッセンスと言ったほうがいいかもしれない。というのもインドではスパイスは味目的で使うという考えよりは、余分なものを外に出す(毒素排出)、体を冷やす、温める、栄養吸収率をあげる、といった効用目的こそが重要だからである。それらスパイスの各種効用のなかで、ヒングはというと、“消化吸収を促す”のトップバッターである。特に野菜や豆のカレーに使われる事が多い。また、鎮静作用もあり、古来よりアーユルヴェーダでは神経病やヒステリー、抑鬱などの治療の為に「薬」としても使ってきた。
            インドのヒング

             ヒングはスーパーや普通の商店などでは粉末状にして売っていたりするのだが、それらはたいてい純正ではない。ピュアなヒングは固形状であることが普通で、それを砕いて使う。物資の流通機能がまだまだ発達していないインドでは、産地の特産品を手にいれようと思うと、現地まで出向かないと手に入らない。だから地方へ行くと、都市部の店先で売っているヒングの質が劣ることを知っているインド人たちがこぞって、“確かなヒング”を買い求める光景を見かけるものだ。

             ヒングは素の状態だと奇妙な臭気があるのだが、“カレーらしい味”の隠し味の正体も実はヒングである事が多く、「インド料理の縁の下の力持ち」的な役割を果たしている重要なスパイスなのである。


            ≪冬野花 (ふゆのはな)/プロフィール≫
            2004年夏よりニューデリーに単身在住。ヒンディー語をしゃべりながら暮らす。フリーライターとして活動しながら時間を見つけてはインド国内旅行をする日々。夏は最も魅せられているヒマラヤ方面、冬はポルトガル植民地時代の面影が残るゴアがお気に入り。旅ルポ、アーユルヴェーダ、ヨーガに関しての執筆も得意。ブログ「心の暴風警報 in INDIA」
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