おおらか出産はオーストラリア風? (オーストラリア)
2007.09.25 Tuesday | by chikyumaruz
文:ケイブ(ゴールドコースト・オーストラリア)
現在2歳の長男をオーストラリアはゴールドコーストの公立病院で出産しました。
こちらではドクターよりミッドワイフ(助産師)による出産が中心です。妊娠中の定期健診は主に一般開業医にみてもらいます。定期健診は一般開業医、出産のときは病院に行くというシステムです。出産までに病院に行った回数は3回です。病院では、一般開業医の診察の内容を基にして検診を行いました。はじめに、助産師による健康診断があり、つぎに医師による診断という流れです。日本と比べると体重管理も一切なしの、おおざっぱな定期健診でしたが、妊娠期間中は順調で大した心配のないものでした。
予定日を1週間過ぎても出てくる気配のない息子。診察のために訪れた病院で、医師に今すぐにでも誘発して出産するべきだと告げられ、その指示通りその晩に入院し、誘発をすることになりました。公立病院では医師の指定はできないため毎回、医師、助産師ともに違います。このときの医師は、「なぜ今まで誰も誘発を勧めなかったのか……」と驚いた様子でした。
人工誘発剤を使った後は病室へ。生まれたばかりの赤ちゃんの泣き声が響き、なかなか眠りにつく事ができませんでした。助産師にゆっくり眠るように言われた私は、「痛みに気づかなかったらどうしましょう?」と今思えば笑ってしまうような質問をしていたのでした。
翌朝、無事陣痛が始まり、かけつけた夫、義両親とともにぞろぞろと分娩室に入りました。日本のように待機する部屋はなく、痛みが始まってから生まれるまで同じ部屋で過ごします。
ベッドに横になると、痛み止めは使うか?と助産師に聞かれ、とりあえず笑気ガスのみで進めることにしました。笑気ガスを吸うと、意識が朦朧としてきたのを覚えています。笑気ガスはとても勢いよく吸わないと出てきません。おそらく、気をそらすための1つの手段なのでしょう。
分娩室に入ってからは、付き添ってくれた義母の手を壊してしまうのではと思うほど、ぎゅっと握り締め、あとどのくらいかかるのかと繰り返し聞きながら痛みと戦いました。このとき夫はビデオカメラを私に向けていました。激しい痛みの中、耐え切れずに「ストップ!」と制止しました。夫は瞬時にしてカメラを持つ手を下ろしました。よっぽど大きな声だったのでしょう。今では笑い話となっています。
そして3時間半後、息子との対面となりました。夫は感動した表情で息子を抱いていました。このとき息子の左目が閉じたままでした。夫が心配して訊ねると、助産師は指でぐいっと目をこじ開けたのです。あまりの勢いにただただ驚いてしまった夫と私でした。そして、すぐに胸の上に息子を置かれ、母乳を飲ませなさいという指示のもと、放心のまま息子に授乳しました。一生懸命に胸に吸いつく息子の姿は忘れられません。
その後生まれたばかりの息子と一緒に部屋へ移動しました。疲労感と痛みを感じている私の横で泣いている赤ちゃん。これからどう世話をしていくのか、戸惑いも感じました。
そんな私に比べオーストラリア人ママのたくましいこと。部屋で一緒になったママたちはなんとも豪快。出産後一晩明けて翌朝にはてきぱきと荷物をまとめて何事もなかったかのように退院していくのです。私は4日後に晴れて退院となりました。妊娠から出産まで全てが、お国柄どおりまさに“おおらか”なものでした。
≪ケイブ/プロフィール≫
日本での外資系ITメーカー勤務の後、海外生活を実現させるためオーストラリアに渡る。ITマネージメントを現地大学院で学んだ後、永住権取得。現在は、一男の母、主婦、そしてITスペシャリストとして奮闘中。次なる夢はエッセイストとして活躍すること。がんばります。